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2022年12月の2 派遣会社付加価値経営のススメ

これから派遣会社の経営環境はどうなるでしょうか。どのような派遣会社が生き残り、どのような派遣会社が消え去っていくでしょうか。今後派遣会社の経営環境はますます厳しくなると言われています。一方で、世の中が変化する時代は派遣会社には大きなチャンスだとも言われています。変化の時代、派遣会社も今までと同じ経営を続けているだけではだんだん通用しなくなっていきます。企業として生き残っていくためにも、今までにない「付加価値」をつけていくことが求められてきます。

2022年12月の2 派遣会社付加価値経営のススメ

現状を見ましょう。現実をしっかり見て、その本質を理解しましょう。まずは、自分たちの置かれた状況を把握し、その原因・理由についても考えてみましょう。
ものごとに対して適切に対応するためにも、まずはちゃんと現実を見て、その本質を理解することが大切です。

愛知県派遣会社の本人時給とマージン率(グラフ1)

ここでは、愛知県の人材派遣事業所における労働者の平均時給とマージン率のグラフを見てみます。今回の調査で愛知県を選んだのはタマツラボの地元だからです。違う地域にお住いの方は、その地域のデータを調べてみてください。データは厚生労働省の人材サービス総合サイト、あるいは各派遣会社のホームページなどから調べました。マージン率や教育訓練に関する取り組み情報の情報公開が派遣会社に義務付けられていますが、データが見つからない派遣会社もありました。愛知県下には3500を越える派遣事業所があるそうですが、得られた有効データは1200あまりでした。それでは、愛知県下の派遣会社の現状を見ていきましょう。
事業者によって平均時給もマージン率もまちまちですが、時給1300~1400くらい、マージン率30%前後くらいのところにデータが密集していることが見て取れます。つまり、時給1300~1400くらい、マージン率30%前後の派遣会社が非常に多いということです。

グラフ1 平均時給とマージン率
グラフ1 本人時給とマージン率

愛知県派遣会社の平均本人時給と平均マージン率(グラフ2)

つぎに、時給によって派遣事業所をグループ分けして、それぞれの平均マージン率を算出してみました。具体的には時給1000~1500のグループ、時給1500~2000のグループ、時給2000~2500のグループ、時給2500以上のグループに分けて、それぞれの平均マージン率を比較してみました。
このグラフ2を見てみると、平均時給1000~1500で平均マージン率が一番低くなっていることがわかります。

グラフ2 平均時給と平均マージン率
グラフ2 平均時給と平均マージン率

平均時給の一番低いグループ(平均時給1000~1500)で平均マージン率低い理由

平均時給の一番低いグループである平均時給1000~1500で平均マージン率が低くなっているのは、どうしてでしょうか?
このグループは、グラフ1で派遣会社が密集している領域(時給1300~1400くらい、マージン率30%前後)と重なります。すなわち、派遣会社の数が非常に多くて、競争が激しいと思われる領域です。ではなぜ、この領域で派遣会社の数が非常に多いのでしょうか。
大きな要因として考えられるのは、この領域は「参入が容易」だということです。時給の低い仕事は、特別なスキルなどが要求されません。ですから、派遣社員のキャリアだとかスキルだとかを細かくチェックしなくても、とりあえず求人に応募してきた人を派遣先企業に連れて行けば、一応は仕事になります。なので、ただ応募に来た人を「派遣先企業に放り込むだけ」の安易で付加価値の少ない派遣会社が密集しやすいのです。そのような派遣会社が密集すると、差別化もできないので「安売り競争」に走りがちです。すなわち、低い派遣料金での競争が激化しやすいのです。
個別のデータを見ていると、派遣会社大手の一部がこの領域でかなりの低いマージン率になっています。大手の派遣会社が低いマージン率で仕掛けてくれば、他の中小の派遣会社も派遣料金を下げなくてはならず、平均マージン率は低くなっていきます。
昨今は、円安や人材不足の影響で低賃金の仕事に人が集まらないといわれています。派遣料金は低いのに低賃金では人が集まらない。そうなると、派遣会社としてはどうしても人材を確保するためにマージン率を削らざるを得なくなります。
この平均時給の一番低いグループで競合するのは派遣会社だけではありません。派遣先企業が外国人技能実習生制度などを利用している場合もあります。技能実習生と比べて派遣社員の能力が高くないと、派遣会社への評価が下がります。つまり外国人技能実習生が派遣料金への下げ圧力になることもあるのです。一方で、同一労働同一賃金の導入によって派遣社員をあまりに低賃金で働かせ続けるわけにはいかなくなっています。また物価高になると派遣社員の賃金への不満も高まります。外国人労働者にとっては、円安になると賃金への不満が増大します。また、インターネットの普及で労働者も派遣会社を自由に選べるようになってきています。
このような状況のために、平均時給の一番低いグループ(平均時給1000~1500)で競争激化・低マージン化が起きやすいと考えられます。

平均時給1000~1500の派遣会社の今後

平均時給1000~1500の派遣会社は今後、どのようになっていくでしょうか。
今後は、派遣先企業の経営改革等で単純作業の仕事が減少していくことが考えられます。ロボット化やDX推進などで賃金の低い単純作業は今後減少傾向になるといわれています。派遣会社が密集しているのに仕事が減れば、さらに競争は厳しくなります。
今後はまた、同一労働同一賃金の厳格な運用や、派遣法の改正などでさらなる賃上げ圧力が予想されます。低賃金で労働者を働かせ続けている派遣会社に対しては、今後も風当たりが強くなっていくことでしょう。
もしかしたら、大手派遣会社の一部ではすでに社内の業務改革を遂行して、低いマージン率でも利益を確保できる企業体質になっているのかもしれません。今後は、小規模派遣会社も低マージン化せざるを得ない状況になっていくことでしょう。
総じて平均時給の一番低いグループ(平均時給1000~1500)では、今後さらに競争激化による低マージン化がおきると予想されます

厳しい言い方かもしれませんが、経営に付加価値のない「ただの派遣会社」は、このままでは消え去っていくことになるでしょう。

それでは、どうすれば良いでしょうか。派遣会社はどのようにして今後乗り切っていくべきなのでしょうか。

経営改革① 業務管理コスト削減で収益確保

まずは、DX化などで、たとえ低マージン率でも利益を出せる企業体質になりましょう。
例えば、
a) 勤怠管理
b) 派遣先業務管理
c) 営業・広報・契約・労使協定管理
d) 求人・個人情報管理
e) 人事評価・キャリア・教育育成管理
f) 請求書・給与・社保等各種書類管理
など、業務全体を見直し、徹底して業務管理コスト削減に取り組んでいくことで、価格競争に負けない体質づくりを目指しましょう。

経営改革② 徹底した付加価値経営

単なる価格競争に巻き込まれないためには、企業として付加価値をつけていくことが有効です。付加価値というのは、派遣先企業にとって価値のあるサービスを提供するということです。経営者の努力・工夫で付加価値をつけ、他の派遣会社に差をつけましょう。
a) 特定業種に特化して会社の存在感をアピールしましょう
b) 派遣社員の学習意欲を刺激し、価値を高めましょう
c) 資格取得推進で会社の魅力アップを図りましょう
d) 派遣社員のメンタル改善・意欲向上に取り組みましょう
e) より良い派遣先企業に選ばれる営業スタイルを取り入れましょう
f) 派遣先企業のシステムに入り込み業務改善に貢献しましょう
g) 派遣社員の自己アピール力の向上に取り組みましょう
派遣先企業から求められる派遣会社になるために、とことん付加価値をつけ、自らを研ぎ澄ましていきましょう。

付加価値経営は、低い派遣料金での競争に巻き込まれないために重要です。付加価値経営をしっかり続けていけば、より高い派遣料金で競争していくことができます。経営者の工夫と努力で、会社の存在価値を高めていきましょう。

派遣会社付加価値経営のススメ(PDFファイル)


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