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2022年10月 愛知県の人材派遣事業者が公開しているマージン率を調べてみました

インターネットを利用して愛知県の人材派遣事業者が公表しているマージン率を調べてみました。マージン率を調べてみることで愛知県下の人材派遣の状況が見えてきます。ここでは派遣労働者本人の時給とマージン率の分布のレビューや「優良派遣事業者」と全体との比較をしながら、人材派遣の課題を検討・考察しました。そして派遣で働く人や人材派遣事業者への提言をまとめました。

愛知県の人材派遣事業者が公開しているマージン率を調べてみました

労働者の方々がより適切な派遣事業者を選べるようにするため、マージン率や教育訓練に関する取り組み情報の情報公開が派遣会社に義務付けられています。つまり、労働者派遣事業の許可を受けた派遣事業者は基本的にマージン率等を公開する義務があり、それを調べれば人材派遣の状況がある程度見えてくるはずです。ここでは愛知県下に事業所を持つ派遣事業者を調べ、厚生労働省のホームページあるいは各企業のホームページなどで公表されている平均派遣料金、平均賃金、マージン率を調べていきました。
対象地域を愛知県にしたのは、当社、タマツラボの活動範囲が愛知県だからで、まずは地元の状況を調べてみようと思ったのです。
やってみたら結構大変でした。愛知県下の派遣事業所はざっと3500を越えており、マージン率の公表のしかたは企業によってまちまちなので、一個一個データを拾っていくのはなかなか手間がかかりました。ホームページの見やすい場所に掲載してくださっている業者もあれば、探してもなかなかマージン率がみつからないホームページもありました。マージン率どころか、なかにはホームページが見つからないことも・・・。
なお、事業者さんのホームページでは、「事務所にてマージン率は閲覧できます」と書いてあったり、「お電話またはメールでお問い合わせ下さい」と書いてあったりする場合もありました。今回の調査ではインターネットで公開された情報のみを活用し、わざわざ派遣事業者さんの事務所に訪問したり、個別に問い合わせたりはしませんでした。また、派遣実績なしのためマージン率が0だったり、マージン率のみが公開されていて派遣料金・時給などがホームページに出ていない場合も検討データから除外しました。
毎日少しずつ情報収集したところ、1200あまりの有効なデータが集まったのでそれをもとに考察してみたいと思います。

派遣事業所における労働者の平均時給とマージン率の分布

データ全体の分布は図1のようになりました。事業者によって平均時給もマージン率もまちまちですが、時給1300~1400くらい、マージン率30%前後くらいのところにデータが密集しているのがわかります。密集しているところは競争が厳しく、マージンも低くなりがちと考えられます。
図2の平均時給と事業者数を見ると1000~1500の事業者が最も多く、平均時給が高くなるほど事業者数が減っていくことがわかります。また、図3を見るとマージン率では30~40%の事業者が最も多いですが、20~30%の事業者も相当数います。
図1 平均時給とマージン率
図2 平均時給と事業者数
図3 マージン率と事業者数

「優良派遣事業者」と全体との比較

「優良派遣事業者」というのは、法令を遵守しているだけでなく、派遣社員のキャリアアップや良い労働環境の確保、派遣先でのトラブル予防に取り組んでいることについて、一定の基準を満たしていると認定された業者をいいます。「優良派遣事業者」と認定された事業者は厚生労働省のホームページからも確認することができます。
優良派遣事業者からは100あまりのデータが集まりました。さすがに「優良」だけあってか、ほとんどの事業さんはホームページの見つけやすいところにマージン率を公開していました。有効データ中のおよそ8.6%くらいが優良派遣事業者のデータということになりました。
優良派遣事業者のデータ分布は図4~図6のようになりました。
優良派遣事業者と事業者全体のグラフを比較して気づいたことは、
① 時給1300~1400くらい、マージン率30%くらいのところにデータが密集していない
② 平均時給1500~2000の事業者が最も多い
③ 優良派遣事業者はマージン率20~30%が比較的少なくなっている(利益を削る低マージン競争に巻き込まれることが比較的少ない)
の3つです。
図4 優良派遣事業者の平均時給とマージン率
図5 優良派遣事業者の平均時給と事業者数
図6 優良派遣事業者のマージン率と事業者数

「派遣」で働く人に

今回、調査してみて感じたこと、「派遣」で働く人に伝えたいことが三つあります。
① 派遣事業者を選ぶときはインターネットでしっかり調べ、「データ」を比較しよう(データを公開していない業者は避けよう)
② 自分が伸ばしたいスキル、キャリア形成への派遣事業者の支援について詳しく確認しよう
③ できれば優良派遣事業者を選ぼう

人材派遣事業者の方に

また、同じく今回の調査結果から、人材派遣事業者の方に伝えたいことが3つできました。
① 厳しい競争にさらされたくないのであれば他社と差をつける特長をつくり、情報発信と自社の評価アップに積極的になろう
② 低マージンでも利益が出せるよう、事務コスト等の経費低減を図ろう
③ できれば優良派遣事業者をめざそう

まとめ

今回の調査のまとめです。
・ マージン率等のホームページでの公表に前向きでない事業者もまだまだ少なくないことがわかりました。一方でインターネットを駆使した情報発信に積極的で高評価を獲得している事業者も出てきています。このあたりの差は今後ますます広がることでしょう。
・ 時給1300~1400くらい、マージン率30%前後くらいの「データ密集エリア」はおそらく派遣業界のレッドオーシャン(競合が多く、競争が厳しくてなかなか利益が出せないエリア)と考えられます。同一労働同一賃金や派遣法のさらなる改正などもあるので、今後も派遣事業は厳しさを増すと思われます。特に今後このエリアにいる事業者はますます厳しくなるでしょう。
・ 優良派遣事業者になることはある程度ブランド力をつけ、他社と差をつける効果も期待できると思われます。とりわけレッドオーシャン域と思われる「データ密集エリア」から脱するには優良派遣業者をめざすことが有効と思われます。ただし、マージン率全体においては決定的な差があるとはいいきれませんでした。


※ 今回の調査のデータや評価に関してご質問等ある場合は、タマツラボまでお問い合わせください。


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