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2023年2月の2 日本の非正規雇用の何が問題で、何を変えるべきか?

日本の非正規雇用の何が問題で、何を変えるべきでしょうか。日本の非正規雇用に対する現状の政策に問題はないのでしょうか。日本は今後、非正規雇用の拡大と人材の流動化をもっと進めるべきでしょうか。それとも、非正規雇用を減らし、正規雇用・終身雇用中心の社会にしていくべきでしょうか。今後日本が経済的に発展するとともに、人々の生活を改善させるためには、非正規雇用の現状をどう変えるのが好ましいでしょうか。ここでは日本の非正規雇用の課題と改善案について考えてみます。

2023年2月の2 日本の非正規雇用の何が問題で、何を変えるべきか?

非正規雇用とは、期間を限定した雇用契約によって働くことをいいます。それに対し、期間を限定せず定年まで働くことは正規雇用、あるいは終身雇用と言われます。非正規雇用としては、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などが含まれます。
日本では「終身雇用」と「年功序列」が雇用形態の中心とされてきました。とりわけ20世紀後半の高度経済成長の時代をつくったのは「終身雇用」と「年功序列」の中で会社を生涯の職場と信じて働く社員たちだったといわれています。
しかしバブル崩壊前後の1990年ごろから、大企業等の経営破たんや人員削減が相次ぐと、正規雇用が減り、非正規雇用が拡大していくことになります。
非正規雇用である派遣社員などが「自由な働き方」であるとして一時的にもてはやされることもありました。しかし実際は、正規雇用になりたいのになることができず、やむなく非正規雇用として働かざるをえない人々も少なくないようです。
非正規雇用労働者は、正規雇用労働者に比べ、賃金が低いという課題があります。バブル崩壊以降、およそ30年日本人の賃金が上がってこなかったといわれています。非正規雇用の拡大は、「日本人の賃金が30年も上がってこなかった」大きな理由のひとつといわれています。

1.非正規雇用はなくしていくべきか、それとも拡大すべきか?

バブル崩壊以降、非正規雇用は拡大してきました。もはや大企業に就職しても一生安心して働き続けられるわけではありません。日本も「人材の流動化」を進めるとともに、非正規雇用を拡大し転職市場を活性化していくべきだという考えが広まりました。
しかし昨今の非正規雇用の現状を見てみると、非正規雇用の拡大は必ずしも日本経済や社会、日本人の生活に良い効果をもたらしたとはいえないかもしれません。中には、「非正規雇用の拡大は間違いだった。日本経済のためにも、日本人のためにも、日本は終身雇用中心の国に戻すべきだ」と強く主張する人々もいます。
非正規雇用をなくしていくべきか、それとも拡大すべきかは、社会状況や労働者の状況によって異なり、一つの決まった答えがあるわけではありません。ただ言えるのは、世の中の変化はますます速くなっていくということ、そして日本は世界の動きを無視して孤立していくわけにはいかないということです。そうであれば、非正規雇用が拡大する状況であっても日本経済が活性化し、日本人の賃金が上がり、日本人の生活が良くなっていくような政策・対策を取っていく必要があるでしょう。

2.「職業安定」から「職業活性化」へ

たとえ正規雇用でも、いわゆるブラック企業で「社畜」として働くのでは労働者として幸せとはいえません。また、変化の速い時代では、求人の多い職種は変わっていきますし、社会が必要とするスキルもどんどん変化していきます。このような時代では、正規雇用を増やして雇用の安定を目指すというよりも、むしろ非正規雇用でも人々が積極的にいろいろな仕事にチャレンジできるような、「職業の活性化」を目指していくべきではないでしょうか。
いっそのこと「職業安定所」の名称も変更して、例えば「職業活性化センター」にしてはいかがでしょうか。
そうして国としても、人々が様々な仕事、いろいろなスキルアップにチャレンジできるよう、動機づけしていく取り組みをしていくことが大切ではないでしょうか。

3.非正規が賃上げされるための方策

非正規雇用労働者は、正規雇用労働者に比べ、賃金が低いという課題があります。なぜ日本において非正規雇用労働者の賃金は低くなってしまうのか?その理由としては、雇用契約が打ち切られるかもしれない弱い立場であること、非正規雇用労働者は労働組合などに加入していない場合が多く賃上げ交渉の対象になりにくいこと、そもそも日本人は従順で自己主張しない大人しい人が多いこと、非正規雇用労働者がより賃金の高い仕事を自由に見つけて「ステップアップ」できるほど日本の労働市場が活性化されていないこと、あるいは非正規雇用として働く場合の賃上げ交渉ノウハウを非正規雇用労働者が持っていないことなどが挙げられます。また中間マージンを取る派遣事業者は、自社の利益のため派遣労働者の賃金を低く抑える傾向にあるという意見もあります。すべての派遣事業者がそうではありませんが、意図的に派遣労働者の賃金を低く抑えようとする悪質な派遣事業者もあるようです。
非正規雇用労働者が賃上げされるための方策としては、①契約で非正規雇用労働者が不利にならないための法整備、②非正規雇用労働者の組合への加入促進、③非正規雇用労働者に賃上げのための主張をするよう呼びかけ、④労働市場の活性化と非正規雇用労働者への「ステップアップ」情報の提供、⑤非正規雇用として働く場合の賃上げ交渉ノウハウの教育
などを進めていくことが効果的と考えられます。
さらに、派遣事業者が派遣労働者の賃上げに積極的になるよう動機づけをしていく政策、または意図的に派遣労働者の賃金を低く抑えようとする悪質な派遣事業者にペナルティーを科す政策等も必要かもしれません。

4.派遣報告書とマージン率等の情報公開について

労働者派遣事業の許可を受けた派遣事業者は、毎年「労働者派遣事業報告書」を提出する義務があります(派遣実績がない場合でも提出は必要です)。また、労働者の方々がより適切な派遣事業者を選べるようにするため、マージン率や教育訓練に関する取り組み情報の情報公開が派遣事業者に義務付けられています。
ただ、この「マージン率等の情報公開」についてはちょっと問題がある気がします。マージン率等の情報公開のしかたは企業によってまちまちなので、調べるのは大変です。2022年に調査したときは情報を見つけるのが大変でしたし、ちゃんと情報公開していない事業者も少なくありませんでした。情報公開によって労働者の方々がより適切な派遣事業者を選びやすくなった、とはとても言えないような状況に思えます。
公開が義務付けられている「マージン率等の情報」は、派遣報告書に記載される内容の一部です。であれば、派遣報告書をオンラインで提出するようにしたうえで、その中の「マージン率等の情報」は自動的に人材サービス総合サイトに掲載されるシステムにしてはどうかと思います。そうすれば、いちいち手間をかけなくても、派遣報告書さえ出せば情報公開されるわけですし、調べる側としても統一されたフォーマットで情報公開さえるので派遣事業者の比較検討がしやすくなると思います。これについては、実際に派遣労働者にアンケートを取るなどして、どんな情報を公開すれば適切な派遣事業者を選びやすいかを調査してみるのも良いかもしれません。

5.キャリアアップ教育訓練は派遣事業者まかせで良いのか?

派遣事業者は派遣労働者の「キャリア形成支援制度」を設けたうえで、「キャリアアップに資する教育訓練」の計画を策定する必要があります。これは、派遣労働者のキャリアアップのため、派遣事業者に教育訓練計画を策定する義務を課したものです。
派遣事業者によっては積極的に派遣労働者のキャリアアップに取り組んでいるところもありますが、一方で計画したはずの教育訓練をほとんど実施していないところもあるようです。キャリアアップに積極的に取り組んでいる派遣事業者か、取り組んでいない派遣事業者かによって、派遣労働者の将来は大きく左右されることになります。キャリアアップ教育訓練は派遣事業者まかせで良いのでしょうか?人材派遣におけるこのあたりの制度はすこし疑問に思います。
派遣労働者のキャリアアップ教育訓練については、派遣事業者まかせでなく、国で専門の教育組織をつくってレベルアップを図った方が良いかもしれません。派遣事業者には費用を負担させて、派遣労働者がその教育組織で教育訓練を受けられるようにしていけば、計画だけ立てて実際には派遣労働者に教育訓練を受けさせていないといった悪質な派遣事業者を無くしていくこともできると思います。


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