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2023年1月の4 原子力発電の安全利用のための必要条件とは

2011年の福島第一原発事故発生以来、原子力発電への信頼が失われ、ゼロにすべきだとする意見が根強くなりました。しかしながら昨今、日本は原子力発電を拡大すべきだとの意見が増えてきているようです。原油価格の高騰、ロシアのウクライナ侵攻などから原油依存のリスクが指摘され、地球温暖化防止、脱炭素やSDGsなどの観点から、CO2排出量の少ないとされる原子力発電を増やしていくべきだとの意見です。ここでは、日本において原子力発電の安全利用のための必要条件について考えてみます。

2023年1月の4 原子力発電の安全利用のための必要条件とは

原子力発電の安全利用のためには、原子力研究のための予算を目的意識を持って確実に確保する必要があります。予算が削られて研究が止まってしまうと、安全性の追求にも限界が来ます。原子力がより安全に利用できるようになるためには、そのために必要な研究を確実に実施できるような予算の確保が必要です。
原子力発電の安全利用のためには、研究者の質を一定以上に確保する必要があります。研究者の質が悪く、研究内容の信頼性が低いようでは、それに基づいて建設された発電所の信頼性も低くなってしまいます。原子力がより安全に利用できるようになるためには、選りすぐりの優秀な研究者を集めるとともに、研究そのものの信頼性の高さを確実にすることが必要です。
研究施設は最新技術を取り入れた先進的な設備を導入し、原子力発電において想定される様々な事態に対応するためにも幅広く様々な研究ができる必要があります。また、原子力エネルギーに関する最新技術情報が簡単に漏えいすることがないよう、技術の内容によっては国家最高レベルかそれ以上の機密保持が実現される必要があります。
大学、研究機関などで研究する場合は、そこの研究者が機密情報を容易に漏えいしないよう対策する必要があります。必要であれば従事する研究者の思想信条や交友関係についても抑えておき、危険思想家を排除するなど情報漏えいしやすい研究者を出入りさせないシステムを確立することも必要でしょう。
安全を優先した建設・維持管理、信頼性評価、および耐震基準の明確化なども必要です。もちろん、原子力発電所はすでに徹底した研究データに基づいて多重の安全設計がされてます。ただ日本国民からの信用を高めるためにも、福島原発事故の発生以降にどのような改良が行われたのか、2011年以前と今の原子力発電とでは安全性がどれくらい違うのかを示すことも大切かもしれません。
事故があるとの前提での対策・予防措置の徹底も必要です。いわゆる「安全神話」を広めすぎて、周辺地域の人々が事故が起きることをまったく想定しない、というのはかえって危険性を高めるかもしれません。むやみに安全神話を広めることよりも、安全のための対策・措置を着実に実施していくことに予算を振り向けるべきでしょう。
放射性廃棄物処理のための施設および土地の確保も重要な課題です。とりわけ高レベル放射性廃棄物等の最終処分場を確実に確保しなければ、原子力発電は将来的に行き詰ってしまいます。放射性廃棄物等を外国に受け入れてもらうという考えもあるようですが、その国が受け入れをとりやめてしまえば、わが国の原子力発電が立ち行かなくなってしまうリスクもあります。
日本が今後、原子力発電の利用を拡大していくというのであれば、以上の点を踏まえ、条件を一つ一つクリアしていく必要があると思われます。多くはすでに取り組みされていることでしょうが、なかなか進まない課題もあるようです。うやむやにせず、しっかり取り組んでいくことが大切です。


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