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持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について

持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について>5「ジェンダー平等を実現しよう」

5「ジェンダー平等を実現しよう」

SDGsの5番目は「ジェンダー平等を実現しよう」です。目標は「ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う」としています。ジェンダーとは性別のこと、男性と女性の別のことをいいます。また平等とは待遇に差をつけず、差別なく等しく扱うことをいいます。社会において不当な差別はなくしていかなくてはなりません。社会の中で男性と女性とでは様々な差別があるとされています。とりわけ、歴史的には女性の立場が弱く、差別され続けてきたといわれています。ジェンダー平等の実現は、いわゆる男尊女卑社会の解消であり、女性の能力と立場の強化を目指したものです。

5「ジェンダー平等を実現しよう」

ジェンダーは人間社会においてどのような意味を持つのでしょうか。ジェンダー平等を実現しようとすることで私たちの生活はどのような影響を受けるのでしょうか。ジェンダー差別の大きい社会ではどのような問題が起きているのでしょうか。ジェンダー差別は常に悪で、ジェンダー平等は常に正しいことなのでしょうか。それとも、ジェンダー差別はそれほど悪いことでもないのでしょうか。そもそも、ジェンダーとは何でしょうか。
ジェンダーとは性別のこと、主に人間を男性であるか女性であるかの事実によって区別けすることをいいます。また言語システムによって、例えば太陽は男性名詞、大地は女性名詞などモノの名前に性別がつけられる場合もあります。
男性と女性は、生物学的な機能が異なります。人が男性に生まれてくるか、女性に生まれてくるかは、受精卵子の性染色体がXYかXXかによって決まるとされています。二次性徴がおきると新しい命をつくる準備として、男性は精子をつくり、女性は卵子をつくって月経がはじまります。そして男女でお互いに求め合う気持ちが生まれます。男女が求め合う気持ちがどのように生まれるかは微妙な話です。一説には男性は本能的に子孫を多く残すためにより多くの女性と交配したがり、女性は強い子を生むために強くて頼りになりそうな男性を選んで求めるとされています。が、世の中の男女を見ていると必ずしもそうとばかりはいえない動きも多いのでこの説が一概に正しいとはいえません。男女が性交し、受精(卵子が精子を受け入れる)することで妊娠します。妊娠するのは、女性です。男性は妊娠しません。妊娠すると通常およそ10か月あまりの間、女性はおなかの中で大きくなっていく赤ちゃんを育みます。そして時期が来たら出産します。出産の苦しみは女性のみが味わいます。大変な思いをして出産したからこそ、母親の子どもへの想いは父親のそれと比べて何倍も大きいといわれます。出産後は母親が授乳します。母親でも出産してすぐ母乳が出る場合、なかなか母乳が出ない場合があるようです。男性でも女性ホルモンが多いと母乳が出ることがあるらしいですが、通常は赤ちゃんに授乳できるのは母親です。男性と女性とでは、生物学的な機能によりこのようにさまざまな違いが出てきます。
人間の場合は、生物学的な機能のほかに、後天的に家庭環境や教育、宗教、社会通念あるいは本人の思い込みなどによって男性と女性に差があると考えることがあります。家庭環境、とりわけ父親と母親がどのような人間関係であったかは、子どもたちの男性や女性に対する考え方に極めて大きな影響を与えます。教育や宗教、あるいは社会通念の中でのジェンダーに対する考え方は多くの人々に深い影響を与えます。また、人間は様々な思い込みによって男性とか女性とかいうものをこうだと決めつけたがります。
ジェンダー差別において問題となるのは、このような後天的な決めつけ、思い込みです。
例えば、
「女性はおしゃべりでうるさいばかりで建設的な意見を言わない」
という人がいたとします。このようなことを言う人は通常、女性蔑視、差別感情を持つ人だと考えることができるでしょう。この様な発言をする人が出てきたとき、その人を「ひどいことを言う」と攻撃する人もでてきます。
しかし問題は、なぜその人がこのような考えを持つに至ったのかです。それは、その人の家庭環境が影響しているかもしれません。その人の経験上、周囲の女性がおしゃべりで建設的な意見を言わない人が多いのかもしれません。その人が生まれ育った社会では教育で男女差別をしていて、女性は出しゃばらないように、自分の意見を言わないように徹底的に教え込まれているのかもしれません。またあるいは宗教的理由で女性を劣ったものとする考えがその人の生まれ育った環境にしみついているのかもしれません。
ジェンダー平等を実現したいのであれば、ただジェンダー平等に賛成しない人々を攻撃するだけではいけません。それは社会の分断と対立を深めるばかりです。大切なのは、人々が差別的な考えを持つに至った原因を見つけ、その中で不当なものや根拠のないもの解消していくことです。
それでは、ジェンダー平等を完全に実現することは可能でしょうか。そもそもジェンダー平等は必要なのでしょうか。
時代の変化によって女性の地位は変わります。また、女性の地位が変わると時代が変化します。戦時では、男性は国や地域を守るため、いつでも戦いに出ていかなくてはなりません。命がけで戦う男たちは尊敬されます。また、女性たちは敵が攻めてくる前に子供を連れて逃げるか、地下室などに隠れるように準備します。治安が悪い社会では、女性は一人で外出するのは危険です。女性は不自由を感じても、決して一人で外出しないようにしなくてはなりません。女性は家に閉じこもり、子どもと一緒にいることが求められます。戦争が多く治安の悪い社会では、「何かあるといけないから女性は家にいろ」という意見は女性が安全でいられるための的確なアドバイスに聞こえます。
戦争がなく平和になり、治安が良くなると社会の雰囲気は変わります。戦う理由のなくなった男性は尊敬も集めにくくなります。女性も家に閉じこもるのをやめ、積極的に外出しやすくなります。平和で治安の良い社会では「何かあるといけないから女性は家にいろ」という意見は差別的に聞こえます。
「何かあるといけないから女性は家にいろ」という意見は差別かもしれませんし、女性の安全を考えた的確なアドバイスかもしれません。それはその時の社会状況によって異なるのです。
人権において性差別が行われていることがあります。財産権や選挙権、労働に関する権利のほか、考える自由、表現の自由がジェンダーによって不当に制限されるとすれば大きな問題です。社会では、言葉による圧力、あるいは無言の同調圧力によって意識されずに男女差別が行われていることがあります。
日本においては女性の財産権が認められていたなど、古代においては比較的女性の権利は認められ、地位は高かったようです。しかし戦乱の時代や武士の時代、軍国主義の時代において女性の地位は低く、権利は大きく制限されていたとされています。現在は憲法上の人権・基本権において男女差別はありませんが、いまだ女性の地位は低く、日本は男女差別の大きい国とみなされているようです。
女性の地位と世界平和は密接な関係を持ちます。戦争中は男性の地位が高まります。また、治安の悪い社会でも男性の地位は高く女性は社会進出しにくいです。女性の地位が高まることは世界が平和になり世の中の治安が良くなることと関係しています。女性の地位向上とは、女性が男性の上に立つという意味ではありません。平等になるということは、上下関係をなくして愛しあう関係になるということです。世の中が平和になり、人々が上下関係でなく愛の関係を持つことが、女性の地位向上において目指すべき姿です。
企業においてもジェンダー平等の実現は重要な課題です。ひとたび女性蔑視のレッテルを貼られると、企業として致命的なことになりかねません。それはただ単に取締役を女性にしたり、管理職の女性比率を引き上げたりすればよいという問題ではありません。女性蔑視や偏見を生む根本的原因を見直し、それを解消していく取り組みがジェンダー平等の実現には求められます。
なお、国連は「ジェンダー平等を実現しよう」に関して9項目の具体的なターゲットを設定しています。実際に「ジェンダー平等を実現しよう」の目標を実現していくためにも、これらのターゲットについても見て、考えていきましょう。


5.1 あらゆる場所におけるすべての女性及び女児に対するあらゆる形態の差別を撤廃する。


このターゲットは女性や女児の権利向上を目指したものです。女性や女児に対する差別はあらゆる場所、あらゆる形態において撤廃されなくてはなりません。しかしながら、男性や男児に対する差別があっても、このターゲットではそれを撤廃せよとは書いていません。このターゲットは基本的に女性が男性と同等の権利を持ち、自ら権利があると認識できその権利を執行できる状態にあることを確実にしようとするために設定されたものです。
国会や地方議会などにて女性議員の比率が高いことは、女性の意見が反映され、女性の権利が十分に保護されるために重要です。立法府において女性議員の比率が高ければ、女性の立場に立った法律が成立しやすく、また女性の権利が不当に阻害されるおそれも少なくなるからです。
国会や地方議会において女性議員の比率が低い国は、女性の権利が守られにくい国、すなわち女性や女児に対する差別が大きい国とみなされます。女性議員がどれだけの比率いれば良いのかについてはよくわかりません。議会における女性議員の比率と、社会における女性及び女児に対する差別の実態について、どんな関連性があるのかについてはもっとよく調べてみた方がいいかもしれません。
企業においては、女性や女児に対する差別、あるいは差別的な企業風土はなくさなくてはなりません。ひとたび「女性差別の会社だ」と社会からレッテルを貼られたら、ブランドイメージが地に落ち取り返しのつかないダメージを受けるかもしれません。取締役に女性がいない場合、あるいは管理職に女性がきわめて少ない場合は自分たちで自覚しないままに女性差別の企業風土が出来上がってしまうかもしれません。また、若年層と高年齢層とでジェンダー差別に対する認識にギャップがある場合もあります。専門の外部講師を呼んで勉強会をし、社内のルール・マナーの成文化をしていきましょう。また、女性のコンサルタントと契約して女性視点でコンサルティングを受けるのも企業風土の改善に効果があるかもしれません。

5.1 行動方針案
・「女性や女児に対する差別をしないため、あるいは差別的な企業風土をつくらないため、定期的に勉強会および社内ルール・マナーの見直しをする。女性視点での意見が経営や事業に反映されやすい仕組みづくりをする」

5.2 人身売買や性的、その他の種類の搾取など、すべての女性及び女児に対する、公共・私的空間におけるあらゆる形態の暴力を排除する。


女性及び女児に対しての人身売買、性的搾取、その他の搾取、あらゆる形態の暴力は、あってはならないことです。昨今では身体にむけた直接攻撃としての暴力だけでなく、精神的な攻撃、嫌がらせ、過大要求や過小な要求、プライバシーの侵害などを含めて「ハラスメント」と呼び、とりわけ権力者によるハラスメントを「パワーハラスメント」と呼んで、してはならない卑劣な行為として問題視されています。
企業としては人身売買や性的搾取、暴力行為を決してしないよう、法令の順守を徹底することはもちろんのこと、パワーハラスメントをなくしモラルの向上を図るよう努めていくことが求められます。これについては企業風土が悪化する前に専門の外部講師を呼んで勉強会をし、社内のルール・マナーの成文化と周知徹底を図ることが大切です。
また、海外進出先において、企業の従業員は人身売買、性的搾取などが行われている場所と関わらないことが大切です。海外で人身売買の疑いがある売春宿に日本人が足しげく通っているとうわさになれば、その企業のみならず日本人全体の評判が地に落ちるかもしれません。逆に現地で女性及び女児への暴力を排除するための活動を支援していくことで、その国のジェンダー平等実現に貢献してくことが望ましいでしょう。

5.2 行動方針案
・「人身売買や性的搾取、暴力行為を決してしないよう、法令の順守を徹底する。またパワーハラスメントをなくしモラルの向上を図るよう努めていく。また企業が活動する地域、海外進出先でのジェンダー平等実現に貢献していく」

5.3 未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除など、あらゆる有害な慣行を撤廃する。


日本では現状、結婚しない若者が増えていて、晩婚化が進んでいることが社会問題とされています。そんな中で「未成年者の結婚、早期結婚、強制結婚及び女性器切除」といわれると、自分たちの知らないどこか遠くの国の問題だと思ってしまいます。しかしこれは、必ずしも日本とは全く関係のない話というわけではありません。
日本国憲法では「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し」とあります。つまり、一方的に誰かに強制されて結婚するのではなく、結婚しようと思う二人の意志から来る合意のみによって成立するということです。
しかしながら、実際に結婚しようとすると、その二人の周りにいる人々が、いろいろな口出しをしてくるようになります。そしてその口出しは往々にして結婚に対してネガティブなものが多くなります。
たとえば結婚しようとする相手の年収、職業、学歴、言葉遣い、家庭環境、家柄の問題など、家族親戚その他の人々がさまざまな難癖をつけて本人が結婚しようとしている相手をこきおろし、よってたかって結婚させないように仕向けようとするのです。
なぜ二人だけの合意のみで成立するはずの結婚に、周りがいろいろな口出しをするのでしょうか。それは、二人の結婚が周囲の気持ちに影響を与えるからです。
できれば、お金持ちで高学歴で高年収、身分が高く、コネで自分たちの地位も引き上げてくれるような立派な家柄の家の御曹司に嫁いでもらいたい。そう思って娘に花嫁修業させて投資してきたのに、その娘がどこの馬の骨ともわからぬ年収も身分も低そうな男と結婚すると言い出したら親としてがっかりです。
周りからの口出しは、結婚しようとする二人に対する嫌がらせです。結婚しようとする二人に対する嫌がらせが横行するために、日本では結婚しない若者が増え、晩婚化が進んでいます。
このターゲットは、結婚についてよくわからないうちに強制的に結婚させられたりしないよう、女性の自由意志と権利を守るためにつくられたものです。有害な慣行はなくしていかなくてはなりません。ただ、「強制的に結婚させられない」権利を守るだけでなく、「二人の合意による結婚を周囲や他人に妨害されない」権利も同時に守っていくことが社会の健全な発展のためには重要になってきます。
企業としては、「社内結婚禁止」とか、「社内結婚したら左遷」とかいった規則あるいは裏ルールをつくってはならないのはもちろんのこと、「取引先の課長と結婚したら昇進、断ったら左遷」などと言って結婚を強要するような行為は控えなくてはなりません。企業風土も含めてあくまで結婚に関して自由意志と権利を守る姿勢を保ち続けることが大切です。たとえそのようなことをしていなくても、社内で「あの人は社内恋愛で左遷された」とか、「あの人は上司のお見合いを断ったから昇進できないんだ」といったうわさが流れることがあります。うわさはいつのまにか広まり、社内の雰囲気を悪化させます。このようなうわさが流れる原因は、人事異動が不公平で、公明正大な人事が行われていないと従業員が不満に感じているところにあります。従業員たちが不満を抱えていると、社内でおかしないわさが流れやすくなります。社内でおかしなうわさが流れやすくなると、社内の雰囲気が悪化し、従業員たちがさらに不満を増幅させていきます。「誰がこんなうわさをながしてるんだ」と犯人捜しをしても、うわさは次から次へと流れてきます。社内でおかしなうわさが流れたときは犯人捜しをするよりも、従業員たちが抱えている不満について調査した方が良いでしょう。従業員の不満や人事に対する疑念を解消していくことが、おかしなうわさを流れなくしていくには大切です。

5.3 行動方針案
・「企業として、結婚に関しては個人の意思と結婚しようとする二人の合意を尊重する。結婚する、しないによって従業員等が著しく不利益を受けるような人事はしない。結婚を妨害したり、強要したりする行為は排除し、公明正大な人事を徹底する。」

5.4 公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供、ならびに各国の状況に応じた世帯・家族内における責任分担を通じて、無報酬の育児・介護や家事労働を認識・評価する。


「無報酬の育児・介護や家事労働」の多くが女性がするべきものとして押し付けられており、それが「労働」として評価されていないとの指摘が従来からあります。女性は生物学的に妊娠、出産、授乳といった機能を有することから、男性よりも家庭にとどまり育児や介護、家事労働の負担割合が大きくなることが多いです。今でも「専業主婦」といって、夫が外で働くのに対し、妻が専ら家庭内の仕事をするという役割分担になっている家庭は少なくありません。しかし女性が、家に閉じ込められた「家事奴隷」のような扱いを受けるようではいけません。家庭内において男女不平等が横行すれば、それは社会にも悪影響を及ぼします。
ジェンダー平等を実現するためには、「常に女性のみが家事をしなければならない」という社会状況は変えていく必要があります。公共のサービス、インフラ及び社会保障政策の提供による女性の過度な負担の軽減、あるいは家庭内でのジェンダー平等をめざした役割分担の見直しが求められます。
企業としては、従業員の家庭環境に口出しするのはプライバシーの観点からも適切ではありません。しかしながら、従業員の家庭で著しい不平等が横行しているのに、企業内でだけジェンダー平等を実現しようとしてもうまくいくものではありません。かつては、男性の従業員であれば「お前らは早く家に帰ってもどうせ寝ころんでテレビ見てるだけだろう」とばかりに残業させ、女性の従業員に対しては「君たちは家に帰ったら忙しいだろう」と残業させずに早めに帰している企業がほとんどでした。逆に男性を早く帰したり、女性を残業させたりすると、管理者としてあるいは経営者として「家庭への配慮がない」と批判されました。
では現代はどうすればいいのでしょうか。ジェンダー平等のためにはただ単に男性と女性の残業割合を等しくすればよいのでしょうか。そうすることで「仕事ができてうれしい」「女性が認められるようになった」と喜ぶ人もいるでしょう。でも逆に、「残業がきつくて家庭のことがボロボロになった」と嘆く女性従業員も出てくるかもしれません。
企業内でジェンダー平等を目指すうえでは、従業員たちの家庭環境への配慮もある程度必要になってきます。育児、介護や家事労働等で女性の負担が高いのに、企業内だけでジェンダー平等を実現しようとしても、かえって女性たちを苦しませることになってしまいます。
企業としては従業員の家庭環境についてアンケートを取り個別の状況に配慮した人材配置をする、有能で働く意欲のある女性が安心して仕事に打ち込めるよう家事負担を軽減するサービスを受けやすくする制度を導入する、あるいは従業員の家族全員で集まってもらい家庭内でのジェンダー平等についての勉強会を開くなどによって、従業員に過度の負担がかかることないよう配慮しながらジェンダー平等をめざしていくのが望ましいでしょう。

5.4 行動方針案
・「従業員の家庭環境についてアンケートを取り個別の状況に配慮した人材配置をし、有能で働く意欲のある女性が安心して仕事に打ち込めるよう家事負担を軽減するサービスを受けやすくする制度を導入し、また従業員の家族全員で集まってもらい家庭内でのジェンダー平等についての勉強会を開くことによって、従業員に過度の負担がかかることないよう配慮しながらジェンダー平等をめざしていく」

5.5 政治、経済、公共分野でのあらゆるレベルの意思決定において、完全かつ効果的な女性の参画及び平等なリーダーシップの機会を確保する。


意思決定に女性が参画しているかどうか、また女性に男性と等しくリーダーシップを発揮する機会が確保されているかどうかは、ジェンダー平等が真に実現できるかどうかに大きな影響を与えます。
企業としては取締役など企業として意思決定をする役職に女性がどれだけ参画しているかが、このターゲットを実現するひとつの指標となると考えられます。女性取締役がいることで、企業の意思決定に女性の意見が取り入れられることが期待されるからです。
女性取締役がいるといっても社長の奥さんで、役員報酬はもらっていても経営に口を出さずに、実質的に社長のワンマン経営という会社もあります。女性が取締役として名を連ねていても、意思決定に影響しないのでは「形だけの女性参画」であり、実質的にはジェンダー平等とはいえません。
単に女性が取締役に名を連ねるのみでなく、実際に意思決定に参画できるようにしていくことがジェンダー平等の実現には必要です。コンサルタントを活用したりして、取締役会で女性が意見を言いやすいように見直していくことも重要化もしれません。

5.5 行動方針案
・「企業内のあらゆる意思決定の場で女性が参画し、リーダーシップを発揮できる機会を確保するよう、会議や承認システムのありかたを見直していく」

5.6 国際人口・開発会議(ICPD)の行動計画及び北京行動綱領、ならびにこれらの検証会議の成果文書に従い、性と生殖に関する健康及び権利への普遍的アクセスを確保する。


ここでは女性の人権としての性と生殖に関する健康及び権利について書かれています。少しわかりにくいですが、家族計画、避妊、人工中絶などがカップルの合意あるいは女性の自由意志によって決められる、また女性器切除などが強制されない、そして健康を損なわずに計画的に出産等ができるための情報やその手段を得られるようにするなどのための目標です。
宗教的理由により人工妊娠中絶を禁止すべきだと考える人々がいます。コンドームなどを使った避妊も悪であると考える人々もいるようです。避妊をするかどうかを決めるのは男性であり、女性に避妊を要求する権利は無いと考える人々もいるらしいです。宗教や信仰は自由ですが、それが女性の権利を著しく害するのであれば考えものです。日本では人工妊娠中絶が選挙のテーマになることはあまりありませんが、海外ではプロライフ(生命を大切にせよ=人工妊娠中絶に反対)かプロチョイス(自由意志による選択を大切にせよ=中絶を選ぶ権利に賛成)かが選挙の重要なテーマになることもあります。たしかに、あらたな生命を生まれる前に奪ってしまう人工妊娠中絶は、ある意味「生まれる前の殺人」であり、厳しく制限すべきかもしれません。ですが、強姦等により明らかに望まない妊娠をした場合や、未成年で出産すれば母体の健康や生命に悪影響を与える恐れが大きい場合など、特定の場合は中絶を認めることも必要ではないでしょうか。
家族計画や避妊についての教育を受けておらず、正しい知識がなければ、必要なときに避妊を要求することもむつかしいでしょう。女性が適切に権利を行使できるためにも、適切なタイミングで女性の権利について適切な教育を受けることが必要です。
企業においては性暴力あるいは女性への悪質な嫌がらせを許さないのはもちろんのこと、女性が性に関して適切な知識を持ち、健康を確保し権利を行使できるような支援活動をしていくことが好ましいでしょう。また、海外進出先などが問題と言える状況であれば、それを改善するための支援活動をしていくことも大切です。

5.6 行動方針案
・「従業員の性と生殖に関する理解について把握し、理解の足りない従業員には必要であれば教育を施す。主要活動地域および海外進出先で女性が性に関して適切な知識をもち、健康を確保し権利を行使できるような支援活動をしていく」

5.a 女性に対し、経済的資源に対する同等の権利、ならびに各国法に従い、オーナーシップ及び土地その他の財産、金融サービス、相続財産、天然資源に対するアクセスを与えるための改革に着手する。


ジェンダー平等を実現するためには、経済的資源に関して男性と女性に平等の権利を法律上与える必要があります。ただ、法律上は平等であっても、社会では必ずしも男性と女性が等しく扱われているとは限りません。社会構造によって、男性が著しくその権利を行使しやすく、女性は行使しにくいようになっていては、実質上はジェンダー平等が実現できていないことになります。
企業としては、ジェンダー平等の目線から経済的資源へのアクセス権に関する社内規則や組織構造を見直すとともに、活動地域や海外進出先の改革を支援していくことが大切になってきます。

5.a 行動方針案
・「ジェンダー平等の目線から経済的資源へのアクセス権に関する社内規則や組織構造を見直すとともに、活動地域や海外進出先の改革を支援していく」

5.b 女性の能力強化促進のため、ICT をはじめとする実現技術の活用を強化する。


ICTとは、Information and Communications Technology の略で、情報通信技術と翻訳されます。原文の Empowerment(エンパワーメント)は、ものごとを思い通りに動かすための「支配権限を与える」ことをいい、日本語では能力強化、あるいは権限付与と訳されます。能力強化も権限付与もしっくりこない文脈では、翻訳者があきらめて「エンパワーメント」とカタカナで表記することもあります。 Empower Woman(女性をエンパワーする)というと、女性に自分のことは自分で選べる意思決定力およびそれを表現する意思表示力、そのための権利と知恵を与え、女性の地位向上と自立を促すという意味合いがあります。
法律上、あるいは社会構造上、女性が権利を持ち経営資源等にアクセスできるようになっても、かんじんの女性が自分で物事をきめられず、うまく意思表示できず、知識や知恵を入手できないがために他に依存するしかないと自分で思い込んでいるのであれば、なかなか女性の地位は向上しません。ジェンダー平等を実現していくためには、女性に権利と知恵、意思決定力、そして意思表示力を与え自立を促すための支援活動をしていくことが大切です。
企業としては、女性の能力強化や女性への権限付与のため、情報通信システムを活用した教育、情報提供をしていくとともに、コミュニケーションの促進を図っていくことが望ましいでしょう。また、企業の主要活動地域や海外進出先での女性のエンパワーメントのための支援活動も計画していくと良いでしょう。

5.b 行動方針案
・「女性の能力強化や女性への権限付与のため、情報通信システムを活用した教育、情報提供をしていくとともに、コミュニケーションの促進を図る。企業の主要活動地域や海外進出先での女性のエンパワーメントのための支援活動を計画する」

5.c ジェンダー平等の促進、ならびにすべての女性及び女子のあらゆるレベルでの能力強化のための適正な政策及び拘束力のある法規を導入・強化する。


ここでは女性のエンパワーメントのための政策と法規について書かれています。女性をエンパワーするのはジェンダー平等実現のためです。
企業においては、女性のエンパワーメントのため社内規則の整備や勉強会、啓発活動の実施をするとともに、企業の主要活動地域や海外進出先での法整備や政策実施を支援していくことなどが行動方針案として考えられます。

5.c 行動方針案
・「女性のエンパワーメントのため社内規則の整備や勉強会、啓発活動の実施をするとともに、企業の主要活動地域や海外進出先での法整備や政策実施を支援していく」

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