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持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について

持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について>9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

SDGsの9番目は「産業と技術革新の基盤をつくろう」です。目標は「強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及びイノベーションの推進を図る」としています。産業とは生産を営む事業をいいます。革新とは新たな考えや方法によってものごとを新しくすること、基盤とは基礎や土台のことです。新たな考えや方法が生み出され、ものごとが新しくなっていくことで社会が進歩し、技術が向上していくことで今まで不可能と思われていたことが可能になっていくことが期待されます。そのための基盤づくりをしていくのがここでの目標です。

9「産業と技術革新の基盤をつくろう」

生産とは自然物を加工するなどして生活に必要な人にとって価値あるものを作り出す仕事をいいます。便利な道具があれば、生活はしやすくなります。多くの人々がより便利で快適な生活をするためには、道具をたくさんつくりだすとともに、より便利な新しい道具をどんどん生み出していくのが望ましいとされています。つまり、生産力と技術革新力が、人々の暮らしをより豊かにすると考えられているのです。
貨幣経済の中では、人々は所得を得るために生産を営み、あるいは労働に従事します。また、市場競争で勝ち残るためには改良や技術革新を続け、新しい魅力的な商品を市場に送り出していく必要があります。大量生産によりコストを下げるとともに、新商品をどんどん繰り出して付加価値を高めていくのです。
一方で、大量生産・大量消費、新商品の乱発による余剰生産などでまだまだ使えるモノがどんどん捨てられていくことが、エネルギーの無駄遣いや環境破壊の原因になっていると指摘されています。人々の営みである生産によってもたらされるエネルギー問題や環境問題が、人々の将来を脅かしているというのです。
産業の発達と持続可能性の両立も特定の正解がある課題ではありません。環境を守るためには、現代の文明社会を全て否定して、人類は古代のあるいは少なくとも中世ぐらいの生活に戻るべきだと考える人もいるようです。一方で、科学の進歩と技術革新によって、持続可能な未来型の文明社会が実現できるはずだという考えもあるでしょう。
国連はどう考えているのでしょうか。「産業と技術革新の基盤をつくろう」のゴールは、産業を発展させていくとともに、イノベーションとインフラの整備によって持続可能な社会を実現していこうという考えが根底にありそうです。つまり、持続可能な社会を実現するためには、産業、技術革新、インフラ整備をもっと推進すべきであるという考えです。
企業においては、市場競争で生き残っていくためにも単に生産をするのみでなく、技術革新を取り入れて新商品を送り出していくことが大事になっていきます。同時に、自分たちが使用している基盤を見直し、その整備や改善に関心をもち、場合によってはそれを支援していくことが望ましいでしょう。
なお、国連は「産業と技術革新の基盤をつくろう」に関して8項目の具体的なターゲットを設定しています。実際に「産業と技術革新の基盤をつくろう」の目標を実現していくためにも、これらのターゲットについても見て、考えていきましょう。


9.1 すべての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。


ここではインフラ(基盤)開発について触れられています。インフラとは通常、人々の生活や産業を支える基盤であり、ガスや上下水道、電気、電話、道路、飛行場、鉄道などをいいます。情報通信の発展により、近年ではインフラと言えば主に電力と情報通信のネットワークを指すことが多くなっています。インフラが無かったり、あっても信頼性や持続可能性などに問題があるようでは人々の生活や産業を支えることができなくなります。
企業においては事業活動するにあたって使用するインフラを大切にし、地域住民の生活や福祉活動に悪影響を及ぼさないよう配慮することが大切です。また、主要活動地域や海外進出先でのインフラ整備や改良を支持していくのも良いでしょう。

9.1 行動方針案
・「事業活動するにあたって使用するインフラを大切にし、地域住民の生活や福祉活動に悪影響を及ぼさないよう配慮する。また、主要活動地域や海外進出先でのインフラ整備や改良を支持していく」

9.2 包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及びGDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。


Industrialization は工業化、または産業化と訳されます。産業化は工場などをつくって付加価値のある商品を生産していくことによって、農業や手工業中心の社会から工業中心の社会に変わっていくことをいいます。ここでは、大幅な産業化、特に後発開発途上国における工業の割合を倍増させることを目標にしています。
企業としては生産効率の向上と付加価値の増大に向けて工業化推進を計画・検証し推進していくことが求められてきます。

9.2 行動方針案
・「生産効率の向上と付加価値の増大に向けて工業化推進を計画・検証し推進していく」

9.3 特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸付などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。


これは特に開発途上国において金融サービスへのアクセス拡大によって産業発展をはかろうというものです。
企業としては、開発途上国に進出して事業展開を推進する際に、地域の小規模企業等に関心を持ち、有望事業への協力・支援を検討していくのも面白いかもしれません。

9.3 行動方針案
・「開発途上国に進出して事業展開を推進する際に、地域の小規模企業等に関心を持ち、有望事業への協力・支援を検討していく」

9.4 2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。すべての国々は各国の能力に応じた取組を行う。


ここでは持続可能化のためのインフラおよびレトロフィット産業のアップグレードについて書かれています。日本文では「産業改善」になっている箇所が、英文を見ると"retrofit industries"となっています。ここでは「レトロフィット産業」の改良による持続可能性の向上と解釈したいと思います。
レトロフィットとは古くなった機械や道具を捨ててしまうのではなく、部品を新しいものに付け替えるなどして改良・チューンアップすることをいいます。例えば、古い自動車は新車と比べて往々にして燃費が悪く、排気ガスからも汚染物質が多く出ています。それをエンジンや排気マフラーなどを付け替えたり、改造したりすることで、新車とも引けを取らないくらい燃費が良く、排ガスがクリーンなクルマにすることができます。近年では、古くてエンジンの動かないクラシックカーに電気モーターを乗せて、電気自動車にして販売するビジネスも始まっているようです。
レトロフィットは古い機械でも使える部分は残し、必要な個所だけ最新に変えていくことで、廃棄物を削減しつつ新技術を利用できることが期待されています。
企業としては、レトロフィットでどんなことが出来るのかを調べ、事業としてのレトロフィットビジネスを前向きに検討するとともに、新商品を開発する際にレトロフィットとの親和性を考慮することが今後必要になってくるかもしれません。

9.4 行動方針案
・「事業としてのレトロフィットビジネスを前向きに検討するとともに、新商品を開発する際にレトロフィットとの親和性を考慮する」

9.5 2030 年までにイノベーションを促進させることや100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとするすべての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。


イノベーションを促進させるにはどうすればいいのか、国家や企業にとっては永遠の課題です。研究開発への投資は一種のギャンブルです。基本的には、才能のありそうな人材に予算と道具と時間を与え、好きにやらせておくくらいしか科学技術を促進させる方法は無いのかもしれません。研究者の人数と予算が増えればイノベーションが促進されるかといえば、その保証はありません。人数や予算をむやみに増やせば、研究開発の費用対効果が大幅に低下するおそれがあります。
むしろ大事なのは、企業、社会、あるいは国家にイノベーションを受け入れる風土と、積極的に取り入れていこうとする姿勢があるかどうかです。研究者が新たな技術を生み出したとしても、それを社会が使わなければ世の中がより良くなるわけではありません。逆に、新しいアイデアを拙速に取り入れてしまい、社会で大きなトラブルが発生しても困ります。自由に研究開発ができる環境と共に、生み出されたアイデアを社会で試し、うまくいけば積極的に普及させていくという三段階の体制がイノベーションの促進には大切になってくると思われます。
企業としては、研究開発において国家・大学と連携し、自由に研究開発ができる環境づくりをしていくとともに、生み出されたアイデアを社会で試し、良ければ積極的に普及できるシステムづくりをしていくことが今後の戦略として求められてくるでしょう。

9.5 行動方針案
・「研究開発において国家・大学と連携し、自由に研究開発ができる環境づくりをしていくとともに、生み出されたアイデアを社会で試し、良ければ積極的に普及できるシステムづくりをしていく」

9.a アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラ開発を促進する。


ここでは開発途上国におけるインフラ開発促進について書かれています。
企業としては、海外進出する際、地域のインフラ開発状況を把握し、そこで事業展開するうえで必要であればその地域のインフラ開発促進のために何らかの貢献をしていくことが大切になってくるかもしれません。

9.a 行動方針案
・「海外進出する際、地域のインフラ開発状況を把握し、そこで事業展開するうえで必要であればその地域のインフラ開発促進のために何らかの貢献案を計画し実践していく」

9.b 産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。


ここでは開発途上国支援としての技術開発、研究、イノベーションについて書かれています。
企業としては開発途上国に進出する際「安い労働力」を求めていることが少なくありません。確かに、先進国の「高い労働力」で生産するよりも、開発途上国に工場を建てて「安い労働力」を使って大量生産をすれば利益を出しやすいでしょう。開発途上国に進出した先進国の企業としては、利益を出し続けるためにずっと「安い労働力」を維持したいと考えるかもしれません。
実際、先進国の企業の中には、開発途上国の教育水準や生活レベルが上昇しないようにその国の政治家に働きかけ、安い賃金を維持しようとしているところもあるようです。それに応じて、開発途上国の政治家たちも、先進国の企業に居てもらうために、自国の国民の賃金を安く維持しようとすることがあります。
「安い労働力」だけを求めて開発途上国に進出する企業にとっては、このターゲットは企業の利益と相反するでしょう。でも、そのような考え方で、「安い労働力」だけを求めて開発途上国に進出すること自体が「持続可能」でなく、今後は見直していくべきなのかもしれません。
開発途上国に進出する際、「安い労働力」だけを求めるのでなく、現地のマーケティングと人材開発を重視し、その国の産業発展に寄与することを目指して目標計画を立てていくことが、今後求められてくるのではないでしょうか。

9.b 行動方針案
・「開発途上国に進出する際、『安い労働力』だけを求めるのでなく、現地のマーケティングと人材開発を重視し、その国の産業発展に寄与することを目指して目標計画を立ててい」

9.c 後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020 年までに普遍的かつ安価なインターネット・アクセスを提供できるよう図る。


ここでは後発開発途上国支援の一環としての情報通信技術へのアクセスについて書かれています。
企業としては、後発開発途上国に進出する際、現地の情報通信技術の状況を把握し、必要であればその向上のために何らかの貢献をしていくのがよいでしょう。

9.c 行動方針案
・「後発開発途上国に進出する際、現地の情報通信技術の状況を把握し、必要であればその向上のために何らかの貢献をしていく」

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