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持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について

持続可能な開発目標(SDGs)と企業の行動方針について>6「安全な水とトイレを世界中に」

6「安全な水とトイレを世界中に」

SDGsの6番目は「安全な水とトイレを世界中に」です。目標は「すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する」としています。「安全な」とありますが、原文はclean(清潔な、菌など有害物や汚れが含まれないこと)とあります。水とは、地球という惑星において雨となり、川をつくり、池や湖をつくり、それが浄化されながら循環することによって生命にとって不可欠になる液体です。トイレとは便器のことですが、原文はtoiletではなくsanitation(衛生)と書かれています。衛生とは病気予防や健康のために努めることをいい、汚物・廃棄物や汚水の処理などを通じて人々を健康への脅威から守ることをいいます。クリーンな水と良い衛生環境を確保することは人々の生命と健康のためにとても重要です。

6「安全な水とトイレを世界中に」

日本語表記のSDGsにおいてはなぜか clean (清潔な)が「安全な」と訳され、sanitation(衛生) が「トイレ」と訳されています。清潔と安全はイコールではありませんし、トイレをつくることだけが衛生を意味するわけではありませんから、ここでは英語表記を参照しながら内容を見ていくことにします。
地球において水は循環します。雨が降り、川をつくり、池や湖をつくりながら海へ流れていきます。大地や海の水は太陽光によって蒸発し、空中で雲をつくり、ふたたび雨となって大地へ落ちてきます。水が循環することで大地や海の豊かさが維持され、私たちは生活することができます。
水は流れないと腐る、といわれます。水が循環しないところでは、さまざまな問題がおきます。水不足あるいは渇水、水質汚染、洪水などは水の循環に異常があるところにおきやすいです。また、水不足などで地下水をくみ上げすぎると、地盤沈下などが発生することもあります。自然は微妙なバランスで成り立っており、どこかで大規模な開発工事をすることで、そこから少し離れた別の場所で水の環境が悪化することがあります。
クリーンな水を確保するのは私たちが生きていくうえでとても重要です。また、たとえ水は確保できても衛生環境が悪ければ人々は病気になりやすく、生命が脅かされます。クリーンな水と衛生を確保するためには、ただ単に水の入ったペットボトルを量産し、ひたすらトイレをつくればよいわけではありません。大切なのは、水の循環を悪化させないこと、自然の摂理に従って人々が健康的にそして持続可能に生活を続けられるよう、水の循環を助けていくことです。
水や衛生環境が大きな問題となる原因として見えてくるのは、乱開発による大規模な環境汚染、そして内戦を含む戦争や内乱による難民の発生です。乱開発によって水の循環システムが狂い、また環境汚染によって水が飲めなると人々の生活が脅かされます。また、戦乱は難民の発生を生みます。難民キャンプは往々にして水の供給や衛生環境の整備が不十分で、多くの人々が水不足に苦しみ、病気で死んでいくことになります。これらを解決していくためには、水やトイレを供給するとともに、問題の原因である乱開発や戦乱をなくしていく取り組みが必要になってきます。
企業においても事業を進めていくうえで、水とその循環を大切にしなくてはなりません。環境破壊となる乱開発などをしないだけでなく、自然の摂理に従い水循環を悪化させないようにしていくことが大切です。また、その活動地域だけでなく海外進出先などでの現状を把握し、その改善のための活動を支援していくことが望ましいでしょう。
なお、国連は「安全な水とトイレを世界中に」に関して8項目の具体的なターゲットを設定しています。実際に「安全な水とトイレを世界中に」の目標を実現していくためにも、これらのターゲットについても見て、考えていきましょう。


6.1 2030 年までに、すべての人々の、安全で安価な飲料水の普遍的かつ衡平なアクセスを達成する。


安全に管理された水道サービスを普遍的かつ公平に、そして安価に受けられることは人々の生活にとって基礎的で重要なことです。日本では水道水が安全でそのまま飲めるのは当たり前と思われがちですが、世界では必ずしもそうではありません。また日本でも、水道管の老朽化など、水道水の安定供給に全く不安がないわけではありません。
企業としては「安全な水」の重要性をあらためて認識するとともに、全社で水を大切にする意識づけをしていくのがよいでしょう。また、地震などの災害により水道水に問題が発生した場合に備え、備蓄水の確保などをしておくとよいかもしれません。さらに、海外進出先などでの水供給の現状を把握し、その改善のための活動を支援していくのも良いでしょう。

6.1 行動方針案
・「社内で水とその循環を大切にするための企業活動方針を作成する。また、海外進出先などでの水供給の現状を把握し、その改善のための活動を支援していく」

6.2 2030 年までに、すべての人々の、適切かつ平等な下水施設・衛生施設へのアクセスを達成し、野外での排泄をなくす。女性及び女児、ならびに脆弱な立場にある人々のニーズに特に注意を払う。


適切な下水施設および衛生施設のサービスを平等に受けられることもまた、水道サービスと同じく人々の生活にとって基礎的で重要なことです。近年の日本では家庭にトイレがあり、外に出れば清潔な公衆トイレが利用できるのは当たり前で、野外での排泄というはあまり考えられませんが、世界では必ずしもそうではありません。
企業としては「衛生環境の確保」の重要性をあらためて認識するとともに、全社で安全と清潔を大切にする意識づけをしていくのがよいでしょう。また、地震などの災害により水道水に問題が発生した場合に備え、非常用トイレの確保などをしておくとよいかもしれません。さらに、海外進出先などでの衛生環境の現状を把握し、その改善のための活動を支援していくのも良いでしょう。

6.2 行動方針案
・「社内で衛生環境の確保を大切にするための企業活動方針を作成する。また、海外進出先などでの衛生環境の現状を把握し、その改善のための活動を支援していく」

6.3 2030 年までに、汚染の減少、投棄の廃絶と有害な化学物・物質の放出の最小化、未処理の排水の割合半減及び再生利用と安全な再利用の世界的規模で大幅に増加させることにより、水質を改善する。


人々が健康に生活し続けられるよう衛生環境を確保するためにも、世界的規模で水質を改善することは重要な課題です。水質汚染によってクリーンな水が確保できず、人々が病気になっていくのは大きな問題です。
企業としては、投棄や有害な化学物・物質の放出、未処理の排水の不法な排出をしないのはもちろんのこと、そのような衛生環境に有害なことをしている企業や団体と商取引をしないことが大切です。また、海外進出先などでの投棄や有害な化学物質放出、未処理排水の現状を把握し、その改善のための活動を支援していくのも良いでしょう。

6.3 行動方針案
・「自社のみでなく取引企業等も含めて、投棄や有害な化学物・物質の放出、未処理の排水の不法な排出をしないことを確実にする。また、海外進出先などでの投棄や有害な化学物質放出、未処理排水の現状を把握し、その改善のための活動を支援していく」

6.4 2030 年までに、全セクターにおいて水利用の効率を大幅に改善し、淡水の持続可能な採取及び供給を確保し水不足に対処するとともに、水不足に悩む人々の数を大幅に減少させる。


地域で得られる淡水に限りがあるのであれば、その限りある水を大切に使わなくてはなりません。水不足を解決する一つの方法として、あらゆる産業において、水利用の効率を改善していくことが考えられます。たとえば農業や工業で使われる水利用の効率を向上させることで、余った水を飲み水や生活に必要な水にまわすことが期待できます。
企業としても、企業活動を進めるうえで水の利用状況を把握し、計画的に水利用の効率改善を進めていくことが求められます。また、活動地域や海外進出先での水利用の効率改善のために支援活動をしていくのも良いでしょう。

6.4 行動方針案
・「企業活動を進めるうえで水の利用状況を把握し、計画的に水利用の効率改善を進めていく。また、活動地域や海外進出先での水利用の効率改善のために支援活動をしていく」

6.5 2030 年までに、国境を越えた適切な協力を含む、あらゆるレベルでの統合水資源管理を実施する。


統合(あるいは総合的)水資源管理というのは、水の管理というものをその循環のあらゆる段階であらゆる形態で総合的に管理していくという考え方です。例えば河川の水源近くで開発が行われると下流での汚染状況や土砂の増減あるいは流水量に影響を与えます。水不足だからと大量に地下水をくみ上げると地盤沈下の原因になったりします。水に関してひとつの問題を解決しようとすると、それが原因で別の問題を引き起こすことがあります。ある部分の水の問題を解決できたとしても、別の水の問題が発生するようではいけません。統合水資源管理は、水について総合的に管理していくことで、部分的な問題解決が全体に悪影響を及ぼさないようにするのを目指したものです。
日本は島国であり、国境を越えて水資源についての協力が必要という感覚はわかりにくいかもしれません。水資源をめぐって国同士で争うことがありますし、ある国の水質汚染が下流の国に大きな影響を及ぼすこともありえます。
企業としては、水資源管理についての理解を深めるとともに、開発や水の大量利用で他に悪影響を及ぼさないようにしていくことが求められます。また、活動地域や海外進出先での統合水資源管理のために支援活動をしていくのも良いでしょう。

6.5 行動方針案
・「水資源管理についての理解を深めるとともに、開発や水の大量利用で他に悪影響を及ぼさないようにしていく。また、活動地域や海外進出先での統合水資源管理のために支援活動をしていく」

6.6 2020 年までに、山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼を含む水に関連する生態系の保護・回復を行う。


人々にクリーンな水を提供するためには、水に関連する生態系を保護ていくこと、そして破壊された生態系の回復を図っていくことが大切です。山地、森林、湿地、河川、帯水層、湖沼など、環境破壊の危機にある地域は少なくありません。
企業としては、活動していくうえでの開発行為などが水に関連する生態系の破壊にならないよう慎重な検討が求められます。また、活動地域や海外進出先での水に関連する生態系保護のために支援活動をしていくのも良いでしょう。

6.6 行動方針案
・「事業開発計画の中で水に関連する生態系保護を重要検討課題としてその予測と対処を明確化する。また、活動地域や海外進出先での水に関連する生態系保護のために支援活動をしていく」

6.a 2030 年までに、集水、海水淡水化、水の効率的利用、排水処理、リサイクル・再利用技術を含む開発途上国における水と衛生分野での活動と計画を対象とした国際協力と能力構築支援を拡大する。


ここでは開発途上国への強力支援拡大がうたわれています。開発途上国では乱開発により水環境や衛生環境が悪化してしまうと、多くの人々が生命の危機に瀕するおそれに直面することになります。
企業としては、開発途上国に進出する際に地域の水環境や衛生環境を悪化させないようこころがけるとともに、水と衛生分野における協力や支援に参加することが望ましいでしょう。

6.a 行動方針案
・「開発途上国に進出する際に地域の水環境や衛生環境を悪化させないようこころがけるとともに、水と衛生分野における協力や支援に参加していく」

6.b 水と衛生の管理向上における地域コミュニティの参加を支援・強化する。


これは地域による改善取り組みへの参加を促そうというものです。
企業としては、主要活動地域や海外進出先において、水と衛生の管理向上における地域コミュニティに参加し、必要であれば支援活動をしていくことが望ましいでしょう。

6.b 行動方針案
・「主要活動地域や海外進出先において、水と衛生の管理向上における地域コミュニティに参加し、必要であれば支援活動をしていく」

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