物質文明は、物質こそ万能であると考える文明です。物質文明における豊かさの判断基準は社会的価値のある物質すなわち富であり、クルマや邸宅、不動産、利益を生む動産、そしてお金など多くの富を所有することが豊かであると考えられています。物質文明においては人々が豊かさを求め技術が進歩し、生活水準が高くなるといわれています。一方で、富の奪い合いや紛争が増え、社会的対立や精神的堕落が生じやすいとされています。
近代の西洋文明は、物質文明であるといわれています。産業革命に始まる科学技術の進歩と生産性の向上は世の中に多くの商品を生み出し、人々を物質的に豊かにするのに貢献したといわれています。
一方で、物質的な豊かさばかりを追い求めるあまり、人々の精神は荒廃していったともいわれています。人々は富を奪い合い、紛争が発生し、国家間の戦争にまで発展します。富をむさぼるものは堕落し、不正や詐欺が横行します。金と権力が支配する世界では、多くの人々が苦しむことになります。
物質文明では、生産性が向上します。機械化、自動化が進んで労働時間を減らせられれば、そのぶんを精神的な活動をする時間として使えます。つまり、物質文明において人々に自由な時間が増えれば、精神的にも豊かになれるはずです。
ところが、必ずしもそうはならないようです。欲の強い人は他人の富を奪ってでも自分だけ豊かになろうとします。競争の厳しい社会ではずっと働き続けなくてはライバルに負けてしまいます。格差が拡大する社会では、少数の人々が富を独占し、多くの人々が長時間労働と貧困に苦しみます。
物質的に豊かになることは大切なことです。しかしながら、欲望による奪い合い、厳しすぎる競争、格差の拡大などによって、多くの人々が苦しみ、物質的にだけでなく精神的にも豊かになれないことになってしまいます。物質文明は必ずしも人々を幸せにしないし、社会を明るくしないのです。
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